しあわせさがせ?

たらたら日記帳

狼少年IIが出来るまで(その1)

今月の頭に「狼少年II」というゲームを出したので
勝手にデザイナーズノートめいたものを書くことにしました。

狼少年II (おおかみしょうねんつー)
3~4名、20分、10歳以上
http://alhara-systems.hatenablog.com/entry/about-wolfboyII

ゲームやルール、グラフィックについてはブログをご参照ください。

最初に書いておかねばならないのはゲームそのものよりも
ゲームの作り方、環境を整備したことです。以下列挙します。
アルハラシステムズは、RXさんはいつもこのへんで苦しんでいたのですよ…
(今作の前提:ルールはRX、グラフィックはheineken、マネージャーはAKR)
ルールデザイン話は後半へ進んで下さい。前半は基本過去の愚痴です。

「デザイナーとマネージャーで役割分担する」
ルールデザインと制作進行の望みは本質的に真逆です。が、一人でやると
時間くれvs早くしろを一人の心中で両方抱えて、しんどかった。
各方面に調整でとられる時間があるならその分はテストプレイしていたい。
で、元々手伝い&ご意見番なサークルメンバーAKRがいたので全権委任してみた。
結果、超楽になった。ありがとうございます。ルールデザインに集中できた。
グラフィック担当のやつはもう私じゃ御しきれないし、今が収まり良いと思う。
進行管理とルールデザインの両立、私の器ではやっぱ無理ですわ…

「オンラインでテストプレイ環境を整えた」
新たにマネージャーやってくれたAKRが、Tabletop Simulatorで
オンラインテストプレイ環境を整えて、他のメンバーは遊ぶだけにしてくれた。
ずっと整備しなきゃいけないけど手が回ってなかったので感謝しかない。
おかげで週に1度位のペースで、がっつりオンラインでテストプレイできました。
テストプレイを友人にお願いするにしても回数や密度に限界あったので、
議論できるサークルメンバーと事前に遊べる環境を初めて手に入れられた…
(沖縄、仙台、神奈川住まいで、RX以外新作をゲムマで初めて遊ぶが常だった)
遊んでいない人のズレた意見を呑まざるをえなかった今までがダメ説はある。

「スケジュールの見える化とWBS、週次固定ミーティングの開催」
これまでもスケジュール、タスクリストと予備日程は全部伝えてたんですが、
毎回崩壊してました。恨み節はいくらでもあるが私もやらかした事あるしな…
それを傍からみていたAKRが、今作からタスクを洗い出して前後関係整備して
ガントチャート引いてくれました。あと毎週水曜日にSkypeミーティングです。
今までここまで進んでいて来週まで○○が××やってきて下さい、ってのを
皆で確認しながら指示出してくれて、進行を共有するのめっちゃ重宝しました。
前回まではプレイングマネージャーRXがグラフィックだけ外注する形式なので、
私がテンパってる時の温度差すごかった記憶が。今この段階って分かり合いたい。

「マニュアルライティングの効率化」
もともとマニュアル先行して書きながらゲーム制作するスタイルでした。
その上で、テストプレイ後に変更がある度にマニュアルを修正するのと、
ルール担当とマニュアル担当が毎回違う組み合わせなのと、
前述までのスケジュール遅れで大抵マニュアル制作が後回しになるのが
最高に相性悪かった。句読点の直しですら連絡反映で数日掛かる上に、
解釈違いが発生しても双方譲らないし。マニュアル都合でルール削れとかね…
結局、前作あたりからルール担当の私がマニュアルも最後まで書くことに。
Google文書/スライドだけなので絵面は地味だが、これが一番早くて正確。
近くにいるゲーマーにマニュアルだけ渡して遊べるか試す余裕も生まれました。
テストプレイでゲーマー知人使い切ってて、以前の駆動テストは人選難しかった。

というわけで、雑用引き受けてくれたAKR偉いという話でした。
グラフィック、ルール、マネージメントの3方面とも出来る奴
(例えばオトーリバースはこの人が原案ルールとマニュアル担当)なので、凄い。
来年のゲムマ2018春に向けて、AKRルール担当ゲームが製作中なので
モノになったらまた宣伝します。RXはマネージャー行きなので遅れたら私のヘマ。

狼少年IIを作る上での環境整備の話題としてはこんなところです。
あとのスペースは、ルールデザイン上で私が気にしていた点のお話です。
普段から考えてる経済系ゲームの凄い点・改善点のキメラ、でしかないけれど。

「カタンってお金の概念ないけど経済回ってて凄い」
経済系、相場のあるゲームは大好きなのでどんなゲームがあるか調べてると、
カタンにお金が無いことに気づきました。でも相場が存在するのは明らかです。
需要と供給があればお金という万能資源がなくとも、交換経済が発生する!
あと実は相場系で苦手な点が。細かい数字・相場トラックが並ぶところです。
何かを売買するたびにマス目を上に下にいじるのが面倒くさいとは思ってたので、
交換における相場は君の心の中にある、という理想郷を追いかけたくなりました。
カタンはお金も相場表も無いけどこういう経済ゲームな側面があるので、
これだけ抜き出して煮詰めて考察してゲームにしてみたいと思わせてくれました。
とは言え、プレイヤー間の直接交換は力量とトップ叩きキングメイカーがキツく、
一度オープンな場所を経由させつつ、交換自体は強制させるが落としどころかと。
という経緯で、手札と場札のカード交換強制された市場という根幹が出来ました。

「消費する基軸通貨の扱いって面白い」
モバマス(ソシャゲ)は、スタミナドリンクという時短アイテムを消費して
時間を買う仕組みですが、他のアイドルと異種アイテム交換が可能です。
この交換が発達した結果、アイドルAはスタドリ◯個って市場が生まれました。
モバマスは経済ゲームと呼ばれる所以の一つです。基軸通貨はスタドリです。
…ええ、消費アイテムですから消費します。この世界のお金は消える定めよ。
お金食うとかカネゴンかよと思いつつ、そういや江戸時代は米本位制でした。
お金が消えるという視点では、前項のカタンによる資源消費に近くもある。
強制的にちょっとずつ無くなるお金って、すっげー扱いが面白いかも!
近いところではフードサプライ系ですが、あれは消費前提なのでやっぱ違う。
例えるなら、お金と食い物の区別をもっと曖昧にさせなければいけません。
ストーンエイジだと食料無い時、レンガや石を食べるしかないあのシュール感よ。
前項から、お金は存在せずどの資源が高価か変動する経済ゲーム作っていたので、
一定ペースで資源が減るから、どれが減るのが良いか見極めさせてみようかと。
このあたりから、マップを一周したら何か資源を選んで捨てる仕様が出来ました。

「プレイヤーの意思決定のみから相場を形成したい」
よくサイコロやらのランダマイザで価値が動く相場ゲームがありますが、
リアルだと、例えばあの複雑怪奇な株価のチャートは全て意思決定の結果です。
全てってのがポイントで、ランダムではなく意思決定のみであれです。凄くね?
社会状況はランダムでも株価は選択の結果によってのみ与えたいし、
裏側でモブがランダムで動かしている株価よりもっと純粋な株価が見たい。
この試みは前作の渦巻くキャンペーンからで、当時の株価は自由操作にしてた。
結果、トップ叩きが強烈に。意図通りだしインタラクション強くて楽しいけど、
トップ一人で1上げるより他3人で3下げた方が強いという当前の事実に気づく。
しかもトップかどうかは印象で決まる。普段強いゲーマーはメタゲームで死ぬ。
開始からマイナスに張り付く株価をみると自由すぎる意思決定は考えものか。
あ、皆がプラスになるのが昨今流行りだし、株価もプラスに固定させてみよう。
トップが1上げる間に3人で3上げる、その差は2。しかもトップを殺す前と比べ
明確な対象の基準がなく、わりかし仲間割れ起こしやすいのではなかろうか。
というわけで前方向にのみ進める相場システムを目指してみることに。
実装方法は、まぁ駒を進めるとかリソースが積み上がってく方法で・・・
そういや前項の別ゲーで、消費する資源の捨て札ジレンマあった。合体してみる?

という3つの思いつきから、
手札と場札が循環し、資源をたまに吐き出させて上昇する株価のゲームに。
交換の相場と吐き出し相場、二つの相場が連動してるな。いい感じだし作るか!
というわけで狼少年IIの基本メカニクス郡が生まれました。ぱちぱちぱち。
あとはこれをテストプレイしてみて感触確かめて、ディベロップしていこう。

とまぁここで書く力が尽きたので、続きは次回の記事に回したいと思います。
クリスマスイブの夜に3時間半もキーボード叩いてりゃ色々と疲れる。

さーて来週のサザエさんは?
「heinekenのグラフィックは天下に轟くべき」
「ロンデルシステム上で動く距離ってジレンマになると思うんすよ」
「シカゴ証券取引所との出会い」
「人類に絶対値2以上の数字を足し算するのは早すぎる」
「何をするのと偉いゲームなのか」
「カードプールは速攻把握させて早見表は燃やそう」
「分かりやすさで見たタイブレーカーの作り方」
「テストプレイ用のキットはありあわせのゲームから」
「世界観とフレーバーが決まるまで」
「コンポーネントと箱サイズと原価と売価と少しのやる気」
「デッキからの闇ドローは悪魔の囁き」
「セットアップの簡単なゲーム、インストの簡単なゲーム」
「マニュアルに書きにくいルールはそもそもルールが複雑」
いつ書くかどうかは知らないけどまた見てくださいね。うふふ