しあわせさがせ?

たらたら日記帳

eXtreme Readingを試す

「eXtreme Reading」という単語をTwitterで見かけて
調べてみたら使えそうな読書形式だったので先日試してみました。
せっかくですので、今後のためにまとめておきます。

【導入・計画】

eXtreme Reading(以下 XR )は、eXtreme Programingをベースにした
「集団で一気に本を読むためのアプローチ」らしいです。
定義付けや方法は、人によって微妙に違うのですが大体そんな感じ。
他にも実践された方がいるようなので、いくつか紹介記事のリンク貼ります。

http://goo.gl/ur67t
http://goo.gl/U5n14
http://goo.gl/EzE0o
http://goo.gl/heGzU

共通する項目はこんな感じでしょうか。
・一度に読む単位を決めて、3〜6人程度で黙読する
・分からないならその都度質問し、全員が読み終わったらまとめの議論を行う
・重要な文やキーワードをハッキリさせ、趣旨や本全体の位置づけを確認する
・これらをホワイトボードなどにまとめて、繰り返し読み進める

解説されている利点として以下のような話があげられています。
・レジュメなど前準備いらず
輪講と比べて、本一冊をまんべんなく、読み逃しなく確認することができる
・他の人の読書や理解へのアプローチに触れることができる

今回、大学院生向け講義で教科書を全員に理解してほしかったため
XRを導入してみることにしました。私や教授含めて全員未経験でしたが、
半年も輪講で座学やりたくないというのは学生も同じ思いだったようです。

講義については、専用のブログを解説しているので
詳しくはそちらをご参照下さい。
琉球大学情報工学科・プロジェクトマネジメント演習
http://ie.u-ryukyu.ac.jp/pm/

【実践】

XRを試すにあたって、こんな案内を学生に出しました。
http://goo.gl/kk7SF

今回、プロジェクトマネジメントの講義なので教科書は以下を指定しました。
だいたい350ページの、計算などがなく知識体系の解説が中心の本です。
他の大学の講義がベースになっているので、
プロマネ入門用の話題が15章程度にまとめられてます。

飯尾淳(編集),「演習と実例で学ぶプロジェクトマネジメント入門」, Softbank Creative, 2009. ISBN978-4-7973-5559-8.
http://goo.gl/vrRmP

講義登録者は17名だったので、6,6,5の3チーム編成としました。
私と担当教授は、3チームの間を様子見つつ参加するというスタイルです。
細かくチーム分けすると目が届かないのではないかという判断でした。

休日の朝10時集合18時解散で、昼休みや休憩を計2時間程度挟んだかなと。
一度に読む範囲は、章・節単位と意味で区切るように指示しましたが、
実際の配分はそれぞれのチームに任せて、適宜休憩を取ってもらいました。
ペースは、節ごとに30分単位で読む配分に収束していくようでした。

実質6時間で教科書を読み終わるペースは出なかったので
(2,3章合計で37ページ、60分。1分あたり0.6ページ)、
後半はスピードアップを求めましたが、疲れさせてしまいました。
新しい知識を、話し合いしつつ読み進めると、案外時間かかりますね。

XRについての導入を最初の30分に、まとめを最後の30分に入れたので
なおのこと時間が足らず、残りは各チームで読んでくるようお願いして
その日は解散となりました。

【評価】

XR終了後、学生にアンケートをとっています。
以下のコメント欄を参照下さい。
http://goo.gl/C1pG0

目についた意見をざっくりまとめると、以下のようになります
・ものすごく疲れた
・XRだと全体理解が進みやすい
輪講よりも章ごとの理解は浅いかもしれない
・話し合いや質問で、考え方を比較・共有できるのは良い
・教科書の全容を把握するのに向いている
・一人だと途中で読むのを挫折していたが、XRはモチベーション維持できた。
・分量が多いので一日では読みきれない
・休日開催でもOKだけど、二回に分けるなど量の調整は必要
・6名でも悪くはないが、話し合いのしやすさでは3,4名が良いかも

一日で読ませようと無理に詰め込んだのが失敗だったようで、
後半になるほど疲れが出ていたのは私にも感じ取れました。反省。
ですが、XR自体については概ね好評を得ており
短期間で一気に全貌がつかめ、チームメンバーが助け合いつつ
質問が常に可能な状況というのは、傍から見てもよい環境だったようです。

今後もXR形式を利用したいか?、という質問に全員が賛成してくれました。
今回が初だったということもあり多少失敗しましたが、
ノウハウが溜まっていけばかなり使えるという感触を持ちました。

【まとめ・改善】

XRの利点について、今回の試みから書き直します。
・レジュメなど前準備いらず。未読の教科書だけで始められる
輪講と比べて、本一冊の全容を確認することができる
・(半期を通す講義と比べると)かなりの短期間で内容把握ができる
・参加者全員に一定の理解を求めるケースに最も有用
・他の人の考え方に触れることができ参考になる
・一人で読むよりもモチベーションを保ちやすい
・節ごとに審議と休憩を挟むので、抜け漏れが少ない

XRの欠点は、こんな感じでしょうか。
・疲労度が高い。ペースを調整しないと、後半脱落者がでてくる
・プレゼン発表の経験を詰めない
・話し合いによる理解がチームメンバーの特性・人数に強く依存する
・アドバイザーがついてないと、メンバー全員が理解できないページで躓く

また、私がまだ把握しかねている未知数の部分はこちら。
・知識ベースではない、演習問題が多い本だとどうなるか
・英語の本でも使えるらしいが、日本語本と比べるとどうなるか

以上のことを踏まえて
今後のXR運用方法としてはこんな感じにしようと思っています。

・未読の教科書を一気に読むときに効果を発揮する読書形式
・勉強会や講義など、複数の人間で学ぶときに特に有用
・一度に読む単位(章・節)を決めて、3〜4人程度で黙読する
・分からないならその都度質問し、全員が読み終わったらまとめの議論を行う
・黙読から議論終了まで20〜30分のサイクルだと飽きにくい
・どこまで何分かかって読んだかを、しっかり記録しペースを確認する
・重要な文やキーワードをハッキリさせ、趣旨や本全体の位置づけを確認する
・2,3チームに一人程度の割合で、先生役をつけて議論を膠着させない
・これらを各自マインドマップなどにメモってまとめ、繰り返し読み進める
・大学院生で日本語教科書の場合、連続4時間以上は効率が落ちる

eXtream Reading (XR) について、今回の試用によるノウハウは以上です。
もしも勉強会のスタイルなどでお困りの方が居ましたら一度お試し下さい。
今後も改善を続けていきますが、この記事を参考に
こんなケースだとこういうことになったなどと、報告を頂ければ幸いです。

以上になります。よろしくお願いいたします。